電気自動車化に舵を切るVolkswagen
2024年が幕を明けてはや1ヶ月。皆さんもそろそろいつもの日常に戻りつつあるのではないでしょうか。私たち『GC-Fan』にとって、今年は「はじまりの1年」。東北の皆さまにドイツ車の魅力をどんどんお届けしていきたいと思います。
さて、そんな気持ちでお届けする記事第1弾は電気自動車について。日本でも多くのメーカーが電気自動車化を推し進めています。いまや電気自動車化は国際的な潮流となっているのです。
こうした潮流を牽引している勢力の一つが、やはり各ドイツ車メーカーであることは間違いありません。
職人の国として知られ、建築などの分野でもゼロエミッションへの取り組みを牽引するドイツ。自動車産業でもやはり世界を牽引しているのです。
そして「欧州自動車産業の巨人」であるVolkswagenもまた電気自動車化に向けて強くアクセルを踏み込んでいます。
巨額の資金を投じるEV化戦略
欧州最大の自動車メーカー、Volkswagenは2023年に発表した投資計画で1200億ユーロを超える巨額の資金を電気自動車やデジタル関連に振り向ける方針を示しました。
Mercedes-BenzやAudiが全車種EV化を掲げるのに対し、この動きは一見「遅い」と捉えられるかもしれません。しかし、実はその背後では「ギガファクトリー」と呼ばれる巨大電池生産拠点の開発が着々と進行。年間50万台をもカバーする規模の電池生産を開始する予定です。当然さまざまな関連研究施設や研究者の確保も進んでおり、リサイクル事業を含めた一大エネルギーサイクル拠点として起ち上がることは想像に難くありません。電気自動車製造においてコストの約4割を占めるといわれる蓄電池。Volkswagenが執ったこの戦略は、おそらく現在の電池市場を席巻するアジア系企業を視野に入れたものと推察されます。つまり、平たく言うなら
「Volkswagenは負ける気などさらさらない」
という明確な意思を感じずにはいられないのです。現在においても「Volkswagenは電気自動車でメルセデスやアウディに遅れをとった」という声が散見されます。しかしこうしたビジネスとしての仕立てに目を向けるなら、「遅れをとった」ではなく「満を持して」であることは明らかなのです。
「行く先々で充電」も可能に
もうひとつ、Volkswagenの戦略の大きな一手と考えられるのが、急速充電ネットワークの拡大です。“日本最大の急速充電ネットワーク”として展開中なのが「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」。Volkswagen、ポルシェ、そしてAudiの各ブランドディーラーを中心に展開する急速充電器ネットワークです。この3ブランドのユーザは、ブランドの垣根を超えて各ブランドの急速充電器約300基を使用することが可能になっています。
また、このネットワークに加え、ショッピングモールやタワーマンションなどにも充電スタンド設置されるケースが多くなってきました。こうした「街のカタチ」も時代のニーズに合わせて変わりつつある今日、電気自動車を検討する際のハードルがだいぶ低くなってきていると言えるでしょう。
電池が良くなり冬にも強く
電池自体の製造から電気自動車と向き合う姿勢を見せたVolkswagen。気になるのはその性能です。電気自動車を検討する際に必ず出るのが「どれくらい走れるの?」というクエスチョンです。
そこで参考にしたいのが2023-2024年のカー・オブ・ザ・イヤーで「10ベストカー」を受賞したコンパクトEV、I.D.4です。
Volkswagenのラインナップ上、最も日本市場に受け入れられたEVといってよいI.D.4。1回あたりの航続距離は上位グレードのProで618Km、汎用モデルのLiteでも435Kmを誇ります。仙台・東京間がおよそ370Km。Liteでも追加充電無しで東京まで余裕で行けてしまう公算です。街乗りをメインとする使い方なら十分な航続距離といえるでしょう。
そうすると気になるのが「この航続距離が東北の雪道でどう変わるか」です。
「I.D.4 冬 航続距離」等のキーワードでネット検索してみると、多くのカーブログがヒットします。それらを見てみると、当然電費低下が報告されています。暖房稼働やアップダウンの多い道をはしるなら当然の結果といえるでしょう。しかし、どのブログを見ても、他の輸入車や国産電気自動車に見劣りするというわけではなさそう。でも正直一般ユーザの視点から見ると、電費を数字で書かれてもちょっとわかりにくいこともあり、あまり響かないのが正直なところ。このあたりは『GC-Fan』でもこの冬中に一度検証記事を出してみたいところです。
ただ、正直に言うならドイツもかなり冬の厳しいお国柄。寒さで性能が一気に低下するような品質を市場に投入すればブランドとして大きな損害になることは必至です。さらに、今後独自の電池開発が進むとするなら、Volkswagenの電気自動車は「もっと冬に強くなる」と考えても良いのではないでしょうか。
電気自動車が利用しやすい環境が続々と
電池性能の向上、充電スポットの拡充、そして電池コストの低下に伴う価格変化への期待感など。Volkswagenの電気自動車は導入ハードルが大きく下がる要素が目白押しです。
これに加え、もうひとつ大きな期待感となっているのが「自宅で充電」の実現です。
充電設備の設置は情報感度の高いユーザにとって大きな関心事のひとつでした。しかし、高電圧対応のための工事が必要なこと、通常の住宅用電力プランだとコスト高になることなどが障壁となり、なかなか自宅用充電器の普及が進まない状況でした。
しかし今日では電力契約プランの拡充や電気自動車社会への理解浸透などにより、自宅用充電器設置へのハードルが低くなってきました。
特に大きく変化したのがディーラーによる住宅用充電器設置サポートの拡充です。
たとえばVolkswagen仙台南、仙台北、盛岡南の3店舗では自宅用充電器設置を希望するユーザのためのサポート事業を展開しています。
メーカーも、ディーラーも、そして建設業界や都市開発の分野でも。電気自動車が普及する準備は着実に整い始めています。自動車を検討する際の選択肢に「電気自動車」がスムーズに加わってくる日常が、もうすぐそこまで来ているのです。